NPO愛知排泄ケア研究会理事長
独立行政法人地域医療機能推進機構
中京病院院長
後藤百万
_排泄の問題は、生命に直接かかわることはまれですが、高齢者介護・看護の現場では、介護・看護を受ける本人のみならず、介護・看護を担う方の生活の質を障害する切実な問題であり、またそれ以前に人間の尊厳にかかわる基本的な問題です。しかし、実際には、排泄ケアに関する知識や関心の不足、あるいは介護・看護・医療にかかわる各専門職や行政の連携のまずさのために適切な排泄ケアが行われず、寝たきり状態や認知症の誘発につながったり、適切な治療機会が失われてしまうことが少なくない状況にあります。
_NPO愛知排泄ケア研究会は、こういった現状をなんとかしたいという同志が集まり、排泄ケアに関する知識の啓蒙や教育、排泄ケアに関わる多職種の連携、排泄ケア専門コメディカルの養成などを目指して、平成14年に創設されました。愛知排泄ケア研究会では、毎月の勉強会を行い、ケアマネージャー、介護ヘルパー、看護師、介護福祉士、理学療法士、医師など多岐にわたる会員の知識・技術の向上を図るとともに、毎年排泄ケア専門コメディカル「排泄機能指導士」の養成を行ってまいりました。排泄機能指導士は第1期生から第20期生まで372名の排泄機能指導士が誕生しています。また、愛知排泄ケア研究会はさまざまな活動を通じて、排泄ケア向上のための啓蒙・教育を行っていますが、社会との連携という観点から、毎年市民公開講座も行っています。
_不適切な排泄ケアはQOLの障害、寝たきりや認知症の誘発につながりますが、逆に適切な排泄ケアは心身機能の保持、寝たきりや認知症の防止に有用な排泄リハビリテーションと位置付けることができ、介護予防の役割も担うものと思います。今後とも会員の皆様の頑張りとご協力を得て、ますます本研究会が発展し、社会とも連携をとりつつ、排泄ケアの向上を通じて、よりよい高齢化社会作りに貢献したいと存じます。排泄ケアに関心のある方、排泄ケアに関する知識や技術を身につけたいと思う方はぜひご連絡ください。
NPO愛知排泄ケア研究会顧問
国立長寿医療研究センター名誉総長
大島伸一
_我が国は、高齢化率、平均寿命、高齢化の速さで、世界一の高齢国、高齢社会を達成した。高齢者が増えるということは、排泄で困る人も増えるということである。今、尿失禁の人は1000万人以上と推計されている。きちんとした排泄ケアが受けられずに、オムツやカテーテルを装着している人はどれほどいるだろうか。
_愛知県では、2002年に、排泄ケアに関するあらゆる関係者が連携して、愛知排泄ケア研究会を立ち上げ、不適切なオムツ使用からの解放など、正しい排泄管理を目標にして活動を進めてきた。なかでも、排泄機能指導士の養成のための教育プログラム研修は、設立以来継続し、現在までに372名を認定した。
_この事業は、最初は、名古屋大学泌尿器科が愛知県の助成を受けて始めたものであるが、現在は、排泄ケアの社会的なモデルとして愛知モデル、あるいは名大モデルとして全国に知られるようになった。超高齢社会では、医療・介護を社会全体として、どのように受け止め支えてゆくのかが問われるが、愛知排泄ケア研究会の行っている事業は、超高齢社会での先駆的なモデルとして、高く評価されるものと信じている。